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Chapter.128 [ クラスモジュール:イベント自作編 ]

■イベントは自作できる?

前回の講座では、既存のコントロールのイベントをうまく活用しカスタマイズすることで、コントロールを擬似的に配列化して管理することができるという内容を解説しました。
クラスモジュールを用いてコントロールを管理することによって、修正や変更がしやすくなるだけでなく、トータルに見てコードの量を大幅に削減し、可読性の優れた記述ができるのでしたね。

クラスモジュールはどうしても難しいイメージがつきまとうため、なかなか活用されていないのが現実です。それに、なければないでプログラミングができてしまうことも、いまひとつ浸透していない原因でしょう。しかし前回のようなコントロールの疑似配列化など、クラスモジュールでなければ実現できないテクニックが存在するのも事実です。覚えておいて損をすることはないですから、興味のある人はしっかり習得しておきましょう。

さて、今回は前回に引き続きイベントを扱います。前回との違いはと言えば、前回がイベントの拡張(カスタマイズ)であったのに対し、今回はイベントの自作という今までにない新しいチャレンジになることです。

そもそも、イベントを自作することに、なにか意味があるのでしょうか。イベントを自作したからといってどんな利点があるのか、なかなかすんなりイメージするのは難しいでしょう。実際私も、イベントを自作しようと思ったことなんてほぼありませんでしたし、絶対にイベント自作が必要な場面っていうのが思いつきませんでした。

極論を言ってしまうと、イベントを自作しなければならないシーンというのは、ほぼ存在しません。クラスモジュールそのものがそうであるように、なければないで、どうにかなってしまうのが現実でしょう。
ただ、イベントを自作する仕組みは確かにあるのです。それを体験しないのも、なんとなく勿体無い気もしますね。それに、知っていればいつか活用する場面が出てくるかもしれません。そんなわけで今回は、イベント自作に取り組んでみることにしましょう。


■おみくじクラス

イベントを自作するにあたり、今回は「おみくじ」をクラスによって実装したいと思います。おみくじクラスの仕様は次のようになります。

おみくじクラスはひとつのプロパティを持つ
そのプロパティの値が変更されたときイベントが発動するようにする
フォーム上のコマンドボタンが押されるとプロパティが変更される
イベントによって5種のくじ結果がランダムに表示される

こんな感じですね。

まずは、おみくじの結果などを表示するためのユーザーフォームを準備します。こちらはかなり簡素でいいでしょう。

750.png

今回はコントロールの名称などは特に変更せず、そのままいきます。数も少ないですし、そのままでも特に問題ないでしょう。

次にクラスモジュールを準備します。クラスモジュールを挿入し、名前を変更し Class_Oracle としておきます。これで下準備は完成、さっそくコードを記述していきましょう。


■イベント名を決めて宣言する

クラスモジュールの宣言セクションには、イベントの名前を宣言する必要があります。これから作成しようとしているイベントに名前をつけ、次のように宣言します。

Public Event イベント名()

Event キーワードに続けてイベント名を記述します。イベントには、引数を持たせることもでき、引数を持たない場合でも空の括弧をつけて宣言します。
え? イベントに引数なんてあったっけ? と思った方は、マウス関連のイベントなどを思い浮かべてみるといいでしょう。例えばマウスムーブイベントはマウスなどのポインティングデバイスによってカーソルが動いたときに発生するイベントですが、イベントが発生した時点でのカーソルの座標があらかじめセットされた状態で呼び出されます。イベントには、引数を通して値を渡す機能もあるわけですね。

そしてもうひとつ重要な点として、イベントの宣言は必ず Public で行ないます。これはなぜでしょうか。
イベントとは、クラスモジュールの外側で検知され発信されるものです。クラスモジュール内部でしか適用されないようなスコープで宣言していては、イベントがイベントたる意味がなくなってしまいます。イベント=パブリックと、決め打ちで覚えてしまって差し支えないでしょう。

今回のおみくじクラスでは、おみくじを引く……つまり、Pull という名称のイベントを実装したいと思います。その場合は次のように書けばいいですね。

Public Event Pull()



■プロパティを用意する

さて、おみくじクラスにはプロパティをひとつ実装すると先ほど書きましたね。続いてはそちらをささっとやってしまいましょう。
クラスモジュールにおけるプロパティの実装は若干わかりにくくなっていましたね。もし不安があるという人は、事前に以前の講座で復習することをオススメします。(参考:Chapter.126 [クラスモジュール:プロパティ編]

クラスモジュールの宣言セクションには、モジュール内でプロパティの値を保持する変数 Paper を宣言しておきます。そしてプロパティの名称は Written とし、Property LetProperty Get の両プロシージャを実装します。

Public Event Pull()
Private Paper As Long

Public Property Let Written(V As Long)

    Paper = Int(Rnd() * (V + 5))
    Paper = Paper Mod 5
    RaiseEvent Pull
    
End Property

Public Property Get Written() As Long

    Written = Paper
    
End Property

プロパティ Written に値がセットされると、セットされた値をもとに乱数を生成し、それをプロパティの値として最終的に変数 Paper に入れておきます。もし、プロパティへの参照があった場合には、この変数 Paper の値を返してやればいいわけですね。

さて、ここで見慣れないステートメントが出てきていますね。これが今回の肝、まさにイベントを発生させている部分です。
RaiseEvent ステートメントに続けて、発生させるイベント名を記述します。今回の場合は Pull イベントがこれにあたりますね。このコードが実行されると、そこでイベントとして検知され通知されます。つまり、イベントを発生させたい箇所に、RaiseEvent を使えばいいわけですね。今回の場合はプロパティに値がセットされたときイベントが発生するようにします。ですからこの場所に RaiseEvent が記述されているわけです。


■フォームモジュール側の処理

さて、続いてはフォームモジュールに記述するコードを見ていきましょう。
フォームモジュールには、全部で三つのプロシージャが記述されます。いったいなんのプロシージャか、想像つきますでしょうか。

ひとつ目は、ユーザーフォーム自体の Initialize イベントプロシージャです。ここで、Class_Oracle のインスタンスを生成しておきます。
ふたつ目は、コマンドボタンの Click イベントプロシージャです。このプロシージャのなかで、生成したインスタンスのプロパティを設定するようにします。
みっつ目は、先ほど自作したイベントである Pull イベントのプロシージャ。実際にこの自作のイベントが発生した際に、どのように動作するのかを記述します。

さて、そこまでを踏まえて、次のコードを見てみましょう。

Private WithEvents ORCL As Class_Oracle '①

Private Sub UserForm_Initialize()

    Set ORCL = New Class_Oracle '②
    
End Sub

Private Sub CommandButton1_Click()

    If IsNumeric(TextBox1.Value) Then '③
        ORCL.Written = TextBox1.Value '④
    Else
        MsgBox "数値を入力してからボタンを押して下さい"
    End If
    
End Sub

Private Sub ORCL_Pull()

    Dim S As String
    
    Select Case ORCL.Written '⑤
        Case 0
            S = "大凶"
        Case 1
            S = "凶"
        Case 2
            S = "吉"
        Case 3
            S = "中吉"
        Case 4
            S = "大吉"
    End Select
    
    Label1.Caption = S
    
End Sub

少々長いですが、順番に見ていきましょう。
まず①ですが、ここではイベントを検知するために WithEvents を使っています。これは前回までの講座で解説しましたね。そして②で、ユーザーフォームの起動と同時に、Class_Oracle のインスタンスを生成しています。

③と④は、コマンドボタンのクリックイベント内部の処理です。③では、テキストボックスに入力されている値が、数値として評価できるかを調べています。IsNumeric 関数は引数の内容が数値として評価できる場合には True を、それ以外の場合には False を返しますので、これを判断基準にして処理を分岐しています。
テキストボックスの内容が数値である場合には、Class_Oracle のインスタンスである ORCL Written プロパティに数値を設定します。この瞬間に、プロパティが設定されようとするわけですから、クラスモジュールに記述した Property Let プロシージャが呼び出されて処理が行なわれます。

クラスモジュール内で RaiseEvent ステートメントによって Pull イベントが呼び出されると、処理は⑤のほうへ移っていきます。⑤では、ORCL Written プロパティを参照し、その値によって処理を分岐、最終的に変数 S になにかしらの結果となる文字列を設定し、最後にユーザーフォーム上のラベルコントロールのキャプションが変更されます。


■まとめ

さて、最後はかなり駆け足になりましたが、理解できたでしょうか。
ちょっとわかりにくい面もありますので、最後にもう一度、今回のサンプルの流れを整理してみましょう。

ユーザーフォームが起動
    ▼
Initialize イベントが発生しインスタンスを生成
    ▼
ユーザーフォームが表示される
    ▼
ユーザーがテキストボックスに数値を入力
    ▼
ユーザーがコマンドボタンをクリック
    ▼
コマンドボタンのクリックイベントが発動
    ▼
クリックイベント内部で Written プロパティを変更
    ▼
Property Let プロシージャが発動
    ▼
Property Let 内部で RaiseEvent Pull
    ▼
Pull イベントが発動
    ▼
Pull イベント内部で Written プロパティを参照
    ▼
Property Get プロシージャが発動
    ▼
Pull イベントの効果でラベルキャプションが変更

使う側の目線で見ると一瞬のことなんですが、クラスモジュールとフォームモジュールの間では、このような目まぐるしい処理の遷移が起こっています。一見すると、複雑で難解な仕組みに感じてしまうかもしれませんが、ひとつひとつ順を追って考えていけば、それほど難しくないはずです。焦らずゆっくり、理解していきましょう。


さて、本講座でクラスモジュールについて何度か解説してきましたが、イベントの自作をもってクラスモジュールに関する講座は終了です。全5回のクラスモジュールに関する講座を順番に読んできた方のなかにも、まだまだクラスモジュールの仕組みがよくわからないという人もいると思います。
実際問題、クラスモジュールは自分で使っていかないとなかなか覚えられません。また、無理に使わなければならないというものでも、ないのです。仕組みだけは最低限覚えておいて損はありませんが、かといって何でもクラスモジュールによって管理するべきなのかと言えばそんなことはなく、時と場合によって使い分けることが最も大切でしょう。

ゲームの開発という点では、クラスモジュールはそれなりに活躍できる場面があると思っています。敵キャラクターを表すクラスを作り、HPやMPなどの各種ステータスをクラス内部で実装するようにしておけば、煩雑な変数の管理をする手間から一気に解放されます。プロパティを設定するだけでHPやMPの増減ができるわけですから、コードの可読性も一気に高くなることは想像できると思います。

なかなか難しい分野であるクラスモジュールの世界。しかし、マスターできれば確実にレベルアップできます。是非、めげずにがんばっていただけたらと思います。
今回の講座で解説したサンプルも、別館に上げておきます。参考にしたい方は下記からダウンロードしてください。


サンプルダウンロード ⇒ コチラよりダウンロードできます。(別館)


■格言

イベントは自作できる
プロシージャ間の処理の遷移に気を配る


なんかクラスモジュール使えるだけで、一歩上のVBAプログラマっぽい感じがしますね。


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