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Chapter.127 [ クラスモジュール:イベント拡張編 ]

■オブジェクトとイベント

前回は、プロパティについて取り上げました。プロパティと通常の変数との違いや、プロパティを独自に実装するために必要なプロパティプロシージャの解説などを行いました。

オブジェクトには様々な特徴があります。オブジェクトの持つ属性や特徴を示すプロパティ、オブジェクトの動作などを定義するメソッド、そしてユーザーからのアクションを受け取るイベントなどがそれにあたります。

メソッド、プロパティと解説してきましたので、今回はイベントについて解説したいと思います。オブジェクトにとって大切な概念であるイベントへの理解を深めることで、ゲーム以外の分野でもイベントを用いた効率よい処理が実現できると思います。

イベントとは、簡単に言うとオブジェクトが発行する信号のようなものです。何かしらの処理やユーザーの動作が検知された瞬間に、オブジェクト自身が信号を発信し、何かが起こったということを知らせます。
たとえば、ユーザーフォーム上に配置されたコマンドボタンがクリックされれば、コマンドボタンのクリックイベントが発生します。これは、コマンドボタンというオブジェクトが、クリックというユーザーの動作を検知し「クリックが発生したよ」という信号を発信していることと同じです。信号を受信した際にどのような処理を行うかをあらかじめ記述しておくことで、ボタンのクリックと同時にゲームの処理を開始するなどの様々な処理を実現できます。

もう少し深く考えてみると、イベントとは、オブジェクトからオブジェクトに対して発信されるものであるということがわかります。思わずクエスチョンマークが浮かんでしまう人もいるかもしれませんが、注意深く、よく考えてみましょう。

先ほどのコマンドボタンの話を例にとると、コマンドボタンが発信したイベント通知を受け取るのはユーザーフォームです。よく、考えてみてください。コマンドボタンのイベントプロシージャは、いったいどこに記述しますか? フォームモジュールですよね。このことからもわかるように、イベント通知を発信するオブジェクトだけがあってもイベント機能というのはうまく働きません。その通知を受け取るオブジェクトがあって初めてイベントが実装できるのです。


■イベントの拡張

イベントがどんなものか理解できても、それが何の役に立つのかと言われても、いまひとつピンとこないという人も多いと思います。今回は、既存のイベントを拡張することで様々な利点があるということを具体的に体感してもらいたいと思います。

次のような場面を想像してみて下さい。

1.たくさんの職業が存在するRPGを作ろうとしている
2.職業を選択する画面を設計しようとしている
3.職業を選択する動作はオプションボタンで実装する
4.選択された職業の画像をリアルタイムに変化させたい

オプションボタンと外見の非常に似ているコントロールにチェックボックスがあります。チェックボックスは同じエリアのなかで複数選択が許されているのに対し、オプションボタンはどれかひとつしか選択できません。今回のようにどれかひとつだけを選択させたい場合には、チェックボックスよりオプションボタンのほうが適しています。
そして今回のキモは先ほどの仕様のうちの4番目、選択された職業の画像を表示させるという部分の実装です。

職業の選択は、先ほどから書いているようにオプションボタンで行います。オプションボタンが選択されてオンになったときや、他のオプションボタンが選択されたことによって選択状態が解除されたときなどには、オプションボタンの Change イベントが発生します。この Change イベントに連動して、自動的に表示される画像が変更されたら非常に便利ですね。今回はこれをやってみましょう。

まずはユーザーフォームの準備です。
あたらしくユーザーフォームを挿入して、各種コントロールを配置していきます。

740.png

かなりたくさんのコントロールを配置することになるので大変ですが、根気良く配置し、コントロールの名前やプロパティなどを適宜変更しておきます。今回は別館で公開しているRPGキャラクター画像を使っています。

さて、ユーザーフォームの準備ができたところで、いよいよコードを記述していきます。やりたいことは、オプションボタンのチェンジイベントと連動して、自動的に画像が切り替わるという仕組みの実装でしたね。

普通に考えると、オプションボタンのチェンジイベントにそのまま次のようなコードを書けばいいような気もしますね。

Private Sub OptionButton1_Change()

    Ima_Screen.Picture = Image1.Picture

End Sub

上記のコードで確かに目的の動作は実装できます。しかしこのような実装方法では、OptionButton1 Change イベントが発生した場合に限り、このコードが実行されます。つまり、ユーザーフォーム上に存在する全てのオプションボタンに同様の動作をさせようと思ったら、それぞれのオプションボタンごとに、先ほどのようなイベントプロシージャを記述しなければならないことになります。これは非常に無駄ですね。
もし、たったひとつのプロシージャで、全てのオプションボタンに同様の動作を実装できるとしたらどうでしょう。クラスモジュールを用いればそれが実現できるのです。


■クラスモジュールの準備

それではクラスモジュールを用いた実装を考えてみましょう。
まずはクラスモジュールを挿入し、名前を変更します。今回はオプションボタンのチェンジイベントに連動した動作を定義しますので、Class_Option という名前にしました。

741.png

続いて、挿入したクラスモジュールに次のように記述します。

Public WithEvents OPT As MSForms.OptionButton

ここでは WithEvents という見慣れないキーワードが出てきましたね。このキーワードは、宣言されたオブジェクトがイベントに関わる処理を行うことができるようにするためのキーワードで、宣言セクションでのみ使用することができます。

上記のコードでは、OPT という名前のオプションボタン型オブジェクト変数を宣言していますね。MSForms.OptionButton という型で宣言されていることからもそれがわかります。これはいわゆるフォーム上に配置することができるオプションボタンを表す変数の型です。このような変数の型で宣言されている OPT は、基本的にオプションボタンが持つプロパティやメソッドをそのままそっくり持っています。そしてイベント処理を行うために、WithEvents キーワードを付加しているのですね。

上記の一文を記述したクラスモジュールでは、オブジェクトボックスから先ほど宣言した OPT を選択することができるようになります。ためしに選択してみると、次のようになります。

742.png

    ▼

743.png

フォームモジュールのときと同じように、勝手にイベントプロシージャが挿入されましたね。オプションボタンの既定のイベントは Click です。OPT は先ほども書いたようにオプションボタンの型で宣言されています。ですからオプションボタンの既定のイベントである Click が自動的に挿入されたのですね。

今回は、Click ではなく Change イベントを用いた処理を実装したいわけですから、プロシージャボックスを使用して OPT のチェンジイベントプロシージャを挿入しておきましょう。

744.png

このチェンジイベントに目的の処理を記述していきます。オプションボタンの値に変化があった場合に、もし変更後の Value プロパティが True だった場合には、対応する画像を Ima_Screen に設定するようにします。それが下記のコードです。

Private Sub OPT_Change()

    Dim S As String
    
    If OPT.Value Then
        S = Replace(OPT.Name, "OptionButton", "") '①
        With UserForm1
            .Ima_Screen.Picture = .Controls("Image" & S).Picture '②
            .Label1.Caption = OPT.Caption '③
        End With
    End If
    
End Sub

順番に見ていきましょう。
まず①の部分では、Replace 関数を使って文字列型変数に何かを取得していますね。OPT はオプションボタンでしたね。先ほどユーザーフォームにコントロールを配置したときのことをよく思い出してみてください。配置したオプションボタンはどれも、OptionButton という文字列+連番、という名前になっていましたね。この①の部分では、このオプションボタンの名前から OptionButton という文字列を抜き取り、数字の部分だけを抜き出して変数 S に代入しているのですね。
そしてここで抜き出された数字のデータを使って、②の部分で目的の画像を Ima_Screen に設定しています。オプションボタン同様、各職業の画像を設定した Image コントロールも Image という文字列+連番になっていたのはそのような理由からです。
③の部分で同時にラベルのキャプションも変更し、これでチェンジイベントの処理は完了です。

さて、ここで一度状況を整理しましょう。
今回作成したクラスモジュール Class_Option は、オプションボタンをカスタマイズするために用意したクラスです。
このクラスモジュール内で OPT というオブジェクト変数を宣言し、WithEvents キーワードを用いてイベントに対応できるようにしましたね。そして、OPT のチェンジイベントとして、先ほどのプロシージャを記述しました。

今までの行程が、いったい何を表しているのか皆さんはイメージできるでしょうか。以前の講座で何度も書いたように、クラスモジュールに記述するのはあくまでもオブジェクトの設計図です。ただ今回の場合は、あらかじめオプションボタン型で宣言されたオブジェクトを利用しています。これは言うなれば、既存のオブジェクトであるオプションボタンを、自己流にカスタマイズしていることと同じですね。

重要なことは、このクラスモジュールに記述した設計図は、あくまでも設計図にしか過ぎないということです。ユーザーフォーム側にコードを記述し、この設計図を活用できるようにしなければ意味がありません。つまり、実際のオブジェクトに、この設計図どおりのカスタマイズを施す作業が必要なのです。


■フォームモジュールの準備


さて、続いてはフォームモジュール側の準備をしていきます。先ほどクラスモジュールに記述した設計図を、実際にフォームの中に配置されているオプションボタンに割り当てるコードを追加します。

ちょっと紛らわしいコードになりますので、先にコードを示します。

Private MyOPT(9) As Class_Option '①

Private Sub UserForm_Initialize()
    
    Dim L As Long
    
    Me.Width = 260
    
    For L = 0 To 9
        Set MyOPT(L) = New Class_Option '②
        Set MyOPT(L).OPT = UserForm1.Controls("OptionButton" & L + 1) '③
    Next
    
End Sub

これはユーザーフォームの Initialize イベントです。つまり、ユーザーフォームが表示される直前に発生するイベントですね。ここで、クラスの設計図にのっとりオプションボタンをカスタマイズする作業を行ないます。

まず、①を見てください。これはモジュールの宣言セクションに記述します。配列変数 MyOPT は、変数の型が Class_Option となっています。つまり、先ほど記述したクラスモジュールの名前ですね。どの設計図を使う予定なのかを、あらかじめ変数の型という形で示しておくわけです。

そして、②です。この部分で、実際に設計図からオブジェクトのインスタンスを生成しています。New キーワードを使って MyOPT Class_Option の実体を与えているのですね。
New キーワードは、設計図(雛形)から、新しくオブジェクトを生成することができます。ここで生成されたオブジェクトのことを一般にインスタンスと呼びます。インスタンスを生成する……と言えば、一般にはこの一連の作業のことを指すことが多いです。

さて、続いて③ですね。ここで、生成されたインスタンスにオプションボタンを割り当てています。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、②の部分で生成したインスタンスは、あくまでも Class_Option のインスタンスです。そして、その Class_Option のなかで定義されている OPT に対して、ユーザーフォーム上に設置されているオプションボタンを割り当てているわけです。

この一連の作業を経てユーザーフォームが表示されると、見た目は普通のオプションボタンですが、きちんと Class_Option の特性を持ったカスタマイズ済みオプションボタンが表示されます。これらのオプションボタンをクリックして選択状態を切り替えると、リアルタイムにイメージコントロールの画像が更新されます。


■まとめ

クラスモジュールに記述されたたったひとつのプロシージャを用いて、複数のコントロールに共通の挙動を与えることができました。それぞれのコントロールごとにイベント関連のプロシージャをひとつひとつ記述していくよりも、クラスモジュールを用いて一括で管理していくほうが様々な面でメリットを得られます。

純粋に、たくさんのプロシージャを記述しなくても済みますし、将来的にコントロールの数が変更された場合にも、無駄なコードを大量に書き足す必要はありません。せいぜいループ処理の回数を変更する程度のことで済みます。
そして、最大のメリットとなるのはコードの修正などに対するメンテナンス性の高さです。コントロールの挙動を変更したいと考えたとき、それぞれのコントロールごとにプロシージャを記述していた場合には、その全てをひとつひとつ変更していかなければなりません。一方、クラスモジュールを使ってその挙動を制御している場合には、対象となるクラスモジュールのプロシージャを修正するだけで、全てのコントロールの動作を一括して変更することが可能です。
ゲームの開発に限らず、プログラムとは日々メンテナンスされ変更・修正されるものです。クラスモジュールを用いてそれらを管理することで、手間の軽減や可読性の向上が可能になるのです。

クラスモジュールというと、何に使うのかよくわからないという人も多いと思います。ここ数回にわたって講座で解説してきましたが、正直、利便性がいまひとつピンと来ないという人もいるでしょう。
しかし、今回紹介したような既存のコントロールをカスタマイズする方法は意外と利用する場面が多くあります。また、それほど難解でもありません。注意深く、ゆっくり理解していけば必ず誰でも活用できると思います。焦らず、そして諦めず、がんばってみてほしいと思います。

実際に動作するサンプルを別館に用意しておきます。
サンプルを参考にしながら、クラスモジュールの仕組みを理解してみてください。


サンプルダウンロード ⇒ コチラよりダウンロードできます。(別館)


■格言

クラスモジュールでコントロールを管理
一括修正も思いのまま


どうしてもとっつきにくい印象のクラスモジュール、うまく活用できれば強力な武器になります。がんばりましょう。


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